ご挨拶

植物工場とバイオカイト

植物工場(農業)とバイオカイト(凧)。一見、何の関係もない事業を当社は同根ととらえて事業を推進してまいりました。なぜ同根か…。農業は、人類最古の産業であり、凧揚げは人類最古の遊びであることは言わずもがなのことではありますが、両者ともに共通することとは、人類最古であるがゆえに固定概念の塊であることです。森久エンジニアリングでは、この固定概念に挑戦し、新たな創造を行ってまいりました。例えば、露地栽培の農業と植物工場の農業はまったく正反対の方向で生産を行っています。露地栽培は、絶えず変化する自然環境に対して、季節と土地と種という条件をうまく組み合わせて何とか自然環境に適応させる環境適応技術と言い換えることができます。一方で、植物工場による野菜栽培は、野菜の持つ成長条件をうまく引き出すため環境を野菜の好む条件に調節し、最適成長を導き出す環境適合技術と言い換えることができます。つまり、野菜を環境に調和させる栽培が露地栽培であるのに対して、環境を野菜に調和させる栽培が植物工場であり、考え方が真逆になっているのです。従来の伝統的な農業生産に新たに加えられる新技術農業の創造は、わが国の農業生産の厚みを増し、今後の農業の将来性を大きく切り開いていくことになると信じています。

 

凧揚げは、世界共通の遊びであるだけでなく、飛び方まで世界共通でした。すなわち、風圧を受けて飛ぶという考え方は、見事なまでに世界標準でありました。空を飛ぶ鳥や昆虫や飛行機は同じ原理で飛行しますが、同じく空を飛ぶ凧だけはまったく別物として存在してきました。凧揚げが、時代遅れの遊びになりつつあるのは、凧揚げが難しく、熟練者でない限り上手く飛ばすことができないため次第に廃れてきたのだと思います。昔ながらの風圧を受けて飛ぶという原理で飛ばすとバランス調整が難しく、また、凧に強い強度を持たせることが必要となり凧が重くなるため、強い風がないと高く揚がりません。お正月に子供たちが、凧を持って走るのは、こうしたことが原因です。バイオカイトは、飛行機の飛行原理を採用し、軽く柔軟な機体を採用し、風圧で飛ぶのではなく揚力で飛行する凧です。すなわち、グライダーに糸が付いた新たな飛翔体と言い換えてもよいと思います。もともと、安定して飛ぶ飛行機や鳥の構造をそのまま取り入れ、糸をつけて飛ばすのだから、簡単に飛ばすことができるわけです。固定概念は、技術者の目を曇らせてしまいます。誰でも目にする飛行機や鳥や昆虫が飛翔する姿を見ても、そこに問題意識がなければ、新たな創造の可能性に気が付きません。

 

科学技術の進歩は、技術課題に素直な目で向き合うことが原点であると思います。固定概念の打破こそが当社の今後のビジネスを拡大発展させ得る大きな原動力になると信じて今後も挑戦してまいります。

 

株式会社 森久エンジニアリング
代表取締役 森 一生